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第7試合 ツヴァイシュメッタリン vs ダブルエックス(2/2)


実際、一度リング外から試合を俯瞰させたファラーシャの判断は適切だった。何よりもまず、ここで負けてしまっては妹を救うことも叶わない。そればかりか一敗という不利な状況から組んでくれたファラーシャに対しても、処分の巻き添えにしてしまう可能性が出てくるだろう。
…ならば、やることはひとつ。ファラーシャの闘いを見守るうちに自身の目的を再確認したあげはは、迷いを振り切って低い姿勢からエックスへと組み付く!

「…くっ! 離れて、くださいっ!」

エックスも両手を組み、上からダブルスレッジハンマーを振り下ろすが、あげはの勢いは止まらない! あっという間に太ももを抱え、身体ごとマットへと押し倒す。
そしてすかさずうつ伏せになったエックスの両脇に自分の足を差し込むと、回転し仰向けに引っくり返してブリッジ! まんぐり返しのような格好になったエックスの腰と膝が、あげはの腿の下で軋みを上げる!

「あ゛ッ!! くううぅぅッ……うぎぃッ!」

「さすがあげはさん、見事なジャパニーズ・レッグロール! 投げ技はほとんど効果のなかったエックスさんですが…これはかなり効いているみたいですね?」

前回の試合で打撃に対しての強さも見せている上、優秀なバランサーにより投げられてもすぐ復帰する。守備面においては穴がないと思われていたエックスだけに、この反応はあげはのみならず、ファラーシャや観客にとっても意外だった。

(この感じ…掛けられるのに慣れてない以上に、身体全体が、妙に固い…?)

関節技のエキスパートたるあげはも直感的に推察したが。もともと内部構造が人とは違うエックスは、関節部もシリンダーやコード類が複雑に埋め込まれている。その上を人工筋肉や皮膚で覆い、人間らしい動きができるようになっているわけだが…構造上どうしても、靭帯や腱がもたらす柔軟な可動域までも再現することは不可能なのである。
ゆえに、実はこのあげはだけは、ダブルエックスにとって最大の天敵。関節を極められた際のダメージは、生身の人間より遥かに大きくなるという弱点を、苦悶の声を上げエックスは今まさに曝け出してしまっていた。

「お姉ちゃんを、いじめるなぁッッ!!」

もちろんこの事態に、イクスが割り込まないはずはない。だが、その動きもしっかり把握していたあげはは、即座に技を外し逆にイクスをストレッチプラムに捉える!

「あ゛あ゛あ゛ーーーッッ!!」

「イクスっ!!」

大股開きの体勢で腕と腰を捻り上げられたイクスだったが、これは解放されたエックスが間を置かずにカット。しかし、このわずかな時間であっても、あげはの技量があれば痛めつけるには十分だった。
左腕を押さえ立ち上がったイクスは、ツリ目がちな瞳を一層険しくしエックスを一瞥。エックスもその意図を察し、小さく頷く。
…これ以上、この相性最悪な相手に自由に動かれるわけにはいかない。ファラーシャがカバーに入る素振りを見せていない今のうちに、戦闘不能に追い込まねば勝ち目はないだろうという考えは同じだった。

「さあ、一旦間合いが離れ、あげはさんは再度タックルの構え…おおっ!? それより早くエックスさんが出た! そしてイクスさんも後ろから追走、うまくエックスさんの脚アーマーを利用し、小柄な身体を隠してます! これは!?」

「ツープラトンで勝負をかける気か。まあ、ダブルエックスとしちゃー、それ以外に選択肢はないわな」

先手を打たれ咄嗟にカウンター関節へ切り替えようとするあげはだったが、覚悟を決めたエックスの突進力はさながら重戦車の如し!
絡みついたあげはの細い腕を振り払って、アーマーに覆われた極太な腕によるラリアートが喉元を直撃する!

「ぐうッ……!」

そして大きく仰け反ったところへ、エックスのカカトを踏み台にしたイクスが背中越しにジャンプ! がら空きとなった顎を目がけてさらなる一撃、ごつい両脚を揃えてのドロップキックが叩き込まれた……だが!

「…っ、浅い!? お姉ちゃん、逃げて!!」

エックス渾身の強烈なラリアートを喰らいながらも、あげははイクスの挙動から目を離してはいなかった。この体勢でかわすのは無理と瞬時に判断、自分から後ろに飛び退きダメージを最小限に抑える!
それに気付いたイクスもすぐエックスに注意を促したわけだが、ドロップキックの勢いであげはと折り重なって倒れた彼女が反撃の対象となるのは自明の理。エックスから引き離すようにロープへ振ったあげはは、自身もその後を追い猛然とダッシュ! 素早くロープを潜り抜けると、もたれかかったイクスを外側から首4の字に固め、逆立ちするように全体重をかけぶら下がる!

「おわっ、これはえぐいあげはさん! 両足首もがっちり抱えられ、イクスさんはトップロープを支点に磔状態! 極端に背中が反り返って、相当苦しそうな表情です!」

「タランチュラか、なかなか味な技を! プロレスでは反則扱いになるからカウント4までしか使えないが、ここのルールならいくらでもかけ放題だからな。…意外にダーティな選択もできるようになってきたじゃねーか」

「しかし、もちろんエックスさんもカットに…行けない!? ああー、さっきのジャパニーズ・レッグロールで膝がかなりやられてしまってる模様! あげはさんが距離を取ったのは、これも見越してのことでしたか!」

どう見ても自分と同じく、地下の陰謀に巻き込まれただけの相手…以前のあげはであれば、その境遇に同情し、自覚せずとも手を緩める場面はあったかもしれない。だが、今の彼女はファラーシャやセセリのことすら頭にはなく、ただ勝つために最善の手を打つことだけを考えていた。それもひとえに、交代時ファラーシャにかけられた言葉によるところが大きい。
思うように歩けないエックスを尻目に、弓なりとなったイクスの身体はなおもきついカーブを描き、腰の辺りが軋みを上げていく。実際イクスは、二人分の体重とロープの反動力を背骨一本で支えているに等しい状態。いかに頑強なレプリロイドとて、この拷問じみた責めにいつまでも耐えられるわけがなかった。

「お……お姉ちゃ………助け……」

「イクスっっ!! あああッッ、動いて! 動いてぇッッ!!!」

口をぱくぱくさせ、か細い声で助けを求めるイクスの眼前へ、這いずるようにして必死に辿り着いたエックスだったが。すでに人間ではあり得ないほど逆Uの字に折れ曲がった身体へ…あげははさらに圧力を加える!

バギイッッ!!!

「ぁ………が………」

「~~~~~~~~ッッッ!!!」

エックスが手を伸ばした矢先のことだった。遂に限界を迎えたイクスのボディはお腹の辺りから横に大きく裂け、後頭部とお尻がくっつかんばかりに二つ折りにされリング外へ転落。当然すべての機能はシャットダウンし、いびつな格好でコンクリートの床に「積み重なって」いるようなその姿は、まさに糸の切れた人形という表現が相応しかった。

「うあ゛あああああぁぁぁーーーーーーッッッ!!!!」

一度ならず二度までも妹を守れず、目の前で無残に破壊されたことで感情のタガが外れたか。エックスは普段の温厚さからは考えられないような雄叫びを上げ、膝からバチバチと放電するのにも関わらず無理矢理立ち上がる! そしてロープの内側へ戻ってきたあげはの正面に仁王立ちになると、大粒の涙を流しながらお腹を深々と突き上げる左ボディ! さらにあげはが前かがみになったところで、撞木で鐘をつくかのような渾身のストレートがその顔面を後方まで撃ち抜いた!

「はははははっ!! 今までいい子ちゃんぶってるのが気に入らなかったが、ようやくらしくなってきたじゃねえか!」
「そうか、2試合通じて顔面攻撃したのは初めてなのかエックスの奴。まー、相手を気遣っていたのか知らないが、そんな配慮はここじゃ死を早めるだけだからねー」
「そうだ! 殺れ! ぶっ殺せ!! 雌犬どもの本気のぶつかり合いこそが、この地下の醍醐味よ!!」

「あ゛あ゛あ゛ッッ!! あッ!! うわあああーーーッッ!!!」

限界までロープをたわませ逃げ場のないあげはに対し、エックスはなおも胸や顎、鼻っ柱をがむしゃらに殴り続ける! あまり打たれ強いイメージはないあげはのこと、これはファラーシャとの一対一にもつれ込むかと観客が思いはじめた時だった。

「…………………………」

「…っ!?」

頬を真っ赤に腫れ上がらせ、鼻と口から血を流しつつもあげはの意識は途絶えてはいなかった。どこか虚無的な、それでいてわずかに恨みのこもった瞳でエックスを見据えると、ロープの反動を生かして大振りになったパンチをかわし、腰を抱きかかえるように喰らいつく!

「がああああッッ!! あああッッ!!」

「…………………………」

エックスも振りほどくべく真上からガシガシと拳を叩きつけるが、密着しての攻防はあげはの方が一枚上手。内掛けめいた形で足を絡めバランスを崩すと、二人同時にマットへと倒れ込む!
もちろん、そこから先は完全にあげはの独壇場。エックスも逃れようと必死にもがくものの、先程まで膝にかかっていた負荷はあまりにも大きすぎた。もはや立ち上がることもおぼつかない相手を淡々と、あげはは裏STFの形へと固めていく。

「この体勢はもう説明不要! エックスさんの猛攻を耐え切ったあげはさん、必殺のスワロウテイル・クラッチで試合を締めに……い、いや違う!? そこからリバース・インディアンデスロックに移行! これは!!」

「ヒュウ、容赦ねえなオイ。クラッチでもトドメとしちゃー十分だと思うんだが、さらにダメを押しやがるか」

スワロウテイル・デスロック…3期の最終トーナメントで一度だけ見せた、スワロウテイル・クラッチの発展形。明日葉姫乃に重傷を負わせ、間接的に彼女を死に追いやる一因となってしまったため、あげはは二度とこの技は使わないつもりだった。
…だが、勝つことのみに集中し、さらに心の中に一滴の黒い波紋が広がった結果。知らず知らずのうちに身体はこの技へと向かい、もうあげはには組み敷かれたエックスの絶叫すら聞こえてはいなかった。

「ぎゃあああああぁぁぁッッ!!! おごおッ!! ぐ…ぎッッ!!」

「…………………いいよねあなたは。妹と一緒にいられて」

「あっ、あ゛あっ!! い゛………ッッ!!?」

ゴギンッッ!! バギャアッッッ!!!

濁った瞳で吐き捨てるようにそう呟くと、あげはは差し込んだ自身の脚を支点に、交差させたエックスの両脚を何の躊躇もなくねじ切って見せる!
おかしな方向へと曲げられたエックスの膝から下は内部の機械が露出し、皮一枚で繋がっているに等しい状態だった。

もはやこうなっては、どんな奇跡が起きようと逆転など望むべくもない。しかし、なおもあげはは技を解かず、上半身のチキンウイングフェイスロックをもきつく締め上げていく。

「む……むぐ……ぉぉ………」

少し前までの烈火の如き気迫は完全に失われ、エックスはもう顔面を圧迫するあげはの腕を、目と鼻と口から溢れさせた液体でぐしょぐしょに濡らすのみ。大きく反り返ったその身体は下腹部だけがマットに接地し、力を込められるたびあげはに匹敵するおっぱいがぶるんぶるんと揺れる。
今や口元はほとんど塞がれ、エックスにはギブアップはおろかくぐもった呻き声しか発することはできなかった。…もっとも普段の状態ならばともかく、仮に宣言できたとして今のあげはがそれを聞き入れたかどうか。

そんな相手の情けない表情などお構いなしに、完璧に決められていたエックスの肩関節へ……あげはは最後の一押しを加える!

ガゴオオォォンンンッッ!!!

「~~~~~~~~ッッッッ!!!! ッッッ!!!」

文字通り骨格の粉砕される鈍い音とともに、声にならないエックスの悲鳴が会場内に響き渡った。
完全に白目を剥き、ビクンビクンと痙攣するエックスの股間からは人間と変わらないような廃液が流れ出し、マットを黄色く染めていく。

誰がどう見ても試合が決したのは明らかだったが…無我夢中でゾーンに入ったあげははもう、目の前の状況が見えていないのか。黒煙を上げ機能停止したエックスに対し、さらに逆の肩、肘、股関節と、手を止めずに黙々と破壊し続ける!

「おおおっ!? こんなオーバーキルやらかすあげはは久しぶりに見るぜ! どうした、またどこかの妖魔に洗脳でもされやがったかー?」
「あーあー、バラバラにされちゃって可哀想にエックスちゃん。もし修理するのが無理だったら、僕がオブジェとして買い取ってあげてもいいよー」
「フン。しかしどれだけ精巧にできていようと、小○生相手にああも遅れを取るようでは。兵器としての価値は危ぶまれるな」
「まあ技術面さえ解析できれば、後はどうとでも…ってオイオイ? いくらなんでも壊しすぎじゃないのちょっとー!?」

今やエックスの解体ショーと化したリング上、一般の観客は手を振り上げその惨状を歓迎するのは当然なのだが。レプリロイドの技術を狙っている暗黒メガコーポ各社の重役は、せめて原形を保ったままにしてほしいと気が気ではなくなってきてたりする。

…そんなお偉方の思惑を察したかのように。ここまでずっと試合を傍観していたファラーシャは、気だるそうにリングへ入るとあげはの頭をわっしとキャッチ。そのまま髪の毛をかき乱すように、前後へがしがしと揺さぶってみせる。

「え……あれ? 私……?」

「正気に戻った? 一応それ、スポンサー様にとっては大事なものらしいし。その辺にしといてくれないと、立場悪くなるのよ私」

その言葉であげはもハッとした表情を浮かべ、自分の下で四肢をもがれたエックスの無残な姿に気付く。
さらに観客からのもっとやれコールが耳に入ってくるが、我に返ったあげはにそれ以上のことなどできようはずもない。自己嫌悪にも似た複雑な感情を抱きながら、初白星を喜ぶこともなくファラーシャに促され、ツヴァイシュメッタリンはリングを後にする。
しかし、その正体は分からなかったが……あげはは確かに、心の奥に今までにないドス黒い何かが芽生えたのを感じ取っていた。




「…デビュー戦としては、少ししょっぱかったのではないかね」

「最低限の仕事はしたものの、相性の悪さは如何ともし難かったか。活躍の場は藍翅あげはに持っていかれてしまったからな」

「だが、次もこうでは困る。もっとしっかりA.S闘士の実力を見せ付けてくれねば、今後のビジネスにも支障が出るわ」

…A.S(アリス・スパルトイ)。ローティーンの少女による試合を中心とした、非合法格闘団体。
この団体は前々から闘士の供給ビジネスを成立させるべく、最大の市場であるCAへと売り込みを続けていた。そして今回、欠員が出たことでファラーシャがテストケースとして送り込まれる流れになったわけである。ゆえに彼女が十分な実績を示せるかどうかは、組織の行方を占う上で非常に重要な位置を占めていた。

ダブルエックスとツヴァイシュメッタリン。一旦交わった4本の糸は、これからどのような方向へ向かうのか。
様々な人間の思惑も絡み合い、闇に包まれたその道先はいまだ杳として知れなかった。



43分30秒
Winner ツヴァイシュメッタリン 1勝1敗 
Loser ダブルエックス 0勝2敗 下位トーナメント転落

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トーナメント本戦 組み合わせ表

トーナメント表1-2

トーナメント表2-2

上位トーナメント1回戦 対戦カード

☆第1試合 
甲斐姉妹vs
カワイイ幸子と愉快な仲間

☆第2試合
ブラックベリーvs
みこみこウォリアーズ

☆第3試合
春夏繚乱vs
ギガントヴィエーディマ

☆第4試合
ツヴァイシュメッタリンvs
The Childish

下位トーナメント1回戦 対戦カード

☆第1試合
ランページ・ヴィーナスvs
蒼黒の第五元素

☆第2試合
忍拳潮流vs退魔コンビ

☆第3試合
ちっぱいメイドズvs
ビッグ・ボンバーズ

☆第4試合
ダブルエックスvs
ギガントヴィエーディマ

参加タッグ一覧

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